5月上旬の泉橋酒造。酒造りに使用する巨大な釜は4月いっぱいで酒造りを終えると、その役割を大きく変化させます。
次の役割は、この釜に沸かした湯で種もみを「温湯消毒」すること。この方法により消毒することで、使用する薬剤をひとつ減らせるのだとか。減農薬栽培への取り組みの一つです。
温湯消毒後は大きなタンクに水を張って「浸漬」作業に入ります。日に1回程度水を交換しながら、24時間水に漬けておきます。水温の合計が100℃(だいたい20℃で5日間程)になる頃、「芽がくっと顔を出したくらいのタイミング」(犬塚さん)で芽出し完了。
種もみを乾かしてから、いよいよ播種作業に移ります!
5月中旬のある日。本日、山田錦の2回目の播種が行われます。
さがみ酒米研究会の会長である池上さん宅にて作業実施。泉橋酒造からは高橋亮太さんと犬塚晃介さんが参加しています。まずは池上さんが、山田錦に合わせて播種機の設定を調整。
というのも品種ごとに種もみの粒の大きさが違うため、均一に落としていくには微調整が必要となるのです。そして池上さんの声かけで作業スタート! みなさん慣れた手つきで床土が詰められた箱を播種機に送り込んでいきます。
この時に重要なのが、種もみが乾いていることと、芽が長くなり過ぎていないこと。湿っていると塊になって落ちてしまいますし、芽が出過ぎていると種同士が絡み合ってしまい、うまく下に落ちないことがあるからです。
播種後はだいたい3〜5日程、育苗箱を段重ねにしてラップで巻いておくそうです。気温が低い日は外に出したり、暖かい日は屋内に入れたりと、様子を見ながら調整します。その後は田んぼの苗床で7〜10日間かけて育てていきます。
春に蔵を訪れると、美しい「緑色の絨毯」のような苗床を見ることができるでしょう!
苗の長さは13〜14センチを目標に育てていきます。「徒長させずにしっかりと茎を太くすることが大事。それに、長すぎると田植え機がうまくかき出してくれないんです」と犬塚さん。
育苗の重要性について伺うと、「本当に米作りのスタート。走り出す時の “踏み切り” なので、そこでくじけちゃうと何もできなくなってしまう。そもそも酒造りができなくなってしまうので、気を引き締めてかかります」とのこと。