【農家インタビュー】程塚きのこ園 程塚 健さん


とにかく原木を触りました。一日千本触ります

 

―― 椎茸農家になる時に、なぜ原木栽培を選択したのですか。


一番の理由はやはり味が良いから。また、完全無農薬で自然の力を利用して栽培することの魅力。それと間伐材を使っているため、豊かな森を守ることにもつながるので。

 

――― カーディーラーにお勤めだったそうですが、異業種でここまでくるには時間がかかったのでは。


ええ。今、6年目(注:取材当時)ですが、とにかく原木を触り続けました。一日千本触ります。日々柔らかさや重さなどを体感し続けることで、わかってくるんですよ。椎茸が「もうすぐ出るぞ!」って合図しているのが。

 

――― うまくいかなかったことは。

 

ありますよ。例えば品種の選定。川崎の気候に合わない品種のため、生産量が上がらなかったとか。菌屋さん(椎茸の種菌を販売する会社)が新種発表会で、原木をディスプレイするんですけど、すごく出てるんですよ。椎茸が。「こんなに発生する品種なら、いいな。これは儲かるな」って思って(笑)。

 

何より「売ること」が大変だった

 

―― 実際に栽培してみると…


「全然出ないじゃん!」みたいな(笑)。出ないというより私が「出せなかった」のですね。ようやくここ数年でコレという数種に絞りました。ただ栽培も大変でしたが、もっと大変なことがあって…。


――― どんなことが?


何よりも「売ること」が大変で。うちの直売所でも「椎茸がこんな値段じゃ買わないよ」って言われたこともあった。他に販路もなかったし。「ヤバい。作れたはいいけど売れない」となって。最初の2年くらいは、どう売るかをずっと考えていました。


――― 今は地元の飲食店で「程塚さんの原木椎茸」が食べられますね。

 

名前を出してくれているので本当によいモノを作らなきゃ! という思いがあります。取引先と本気で付き合っていると面白いです。

 

 

作るだけが農業じゃない


――― 今後、目指すところは。


常に変化できる農園、そして自分でありたい。現状で満足したらおしまいだから。今出している椎茸はまだまだ「完成品」ではないと思っています。それと、若い人が農業の世界に入るキッカケになれれば。


――― というと?


農業に興味があっても、「畑を持っていないから…」とか「儲からないのでは?」と考えてしまいますよね。でも、使われていない農地はあるのだから、可能性はある。仮にそこまでできなくても、作物を作るだけが農業じゃない。


――― 例えば。


鈴木さんがこうして地域に発信することも僕の中では “農業” の一環だし、農産物の加工品製造も同様です。そういう所まで視野を広げられる状況にすることが我々の仕事なんです。それにはまず我々がサラリーマン並み、いやそれ以上に儲けることが大事。都市農業にはチャンスがあると考えています。

 

※記事および写真は2015年4月発行 goo-bit第2号より転載しました。